2012年5月 Free Distribution
 Words & Poetry Reading:武田こうじ
 Piano:高見澤 淳子
 Guitar:高見澤 克哉

ポエトリーリーディングレコードwith武田こうじ

財団法人 仙台市文化事業団の主催する「RE:プロジェクト」
このプロジェクトでは、東日本大震災で被災した仙台市沿岸部
の地域資源や文化を再発見、再認識、再考することを目的とし
た活動を行っています。その場所にはかつてどんな営みがあっ
たのか、その姿を辿り、記憶にとどめこれからに繋げること。
仙台市を拠点に活動する詩人の武田こうじさんは、被災地を歩
き、被災された方々に触れ、事業団が発刊している冊子「RE:
プロジェクト通信」を通して詩を発表しています。
「これらの詩を音として記録し、被災された方々に届けたい」  
という武田さんの想いに 寄り添うように、私たちは音楽を通
して参加させていただきました。
協力:財団法人 仙台市文化事業団

Track 01 
 てがみ

 ときのながれにそっと
 てをのばすように
 すなはまにゆれる
 いっぽんのき

 ことばにできない
 そんなことばにかこまれて
 まちはないた

 あれもこれも
 あいしていた

 あのひから
 わからない
 くりかえし
 てがみをかいている

 ここであなたとであい
 ここであなたとくらし
 ここであなたにふれる

Track 02
 なまえ

 はじまりも
 さよならも
 くらしのとちゅうにある

 わからなかったことにも
 なまえをつけて
 わたしはあなたに
 あいにいく

 うそみたいな
 ほんとのこと
 ほんとなのに
 りかいできないこと

 そんなおもいにも
 なまえをつけて
 あなたは
 なにかいいかけた

 わたしのなかのふかい
 おくのおくのところ
 ゆきがそっと
 ふりつもっている

Track 03
 やくそく
 
 すいへいせんを
 ゆびでなぞって
 ぼんやりと
 リダイアルした

 すぐそこなのに
 とおいかこ

 ほしはくりかえし
 やってくる
 ほんとうのことを
 なかなかいえない
 ぼくたちのかなたに

 あいして
 あきらめて
 なぐさめて
 といかけて
 このうみに
 ただいま
 おかえり

Track 04
 夜の途中は朝の途中

 穏やかに受け入れていく夜の途中
 お互いがお互いに与えることができますように
 穏やかに消えていく朝の途中
 奪い合う前に笑い合うことができますように

 やりなおせる気がしている
 助けて と ありがとう を
 いつも繰り返しているから

 新幹線はまた新しいスピードを出した
 こんなにも変わらない僕たちを乗せるために
 キッチンも新しい
 こんなにも懐かしいカレーを作るために

 今 生きている
 そんな気がするから
 この傷ジャブジャブ洗おう

 与えることができますように
 笑うことができますように

 右手は髪をつかみ 左手が記憶していく
 忘れたとしても
 すぐ思い出すことができますように